仮想通貨・ビットコイン・取引所の法律上の位置付け
今日は、仮想通貨・ビットコイン・取引所の法的な位置付けについて解説しようと思います。
仮想通貨の法律上の位置付け
日本では仮想通貨が早い段階で法によって認められたとよく言われているとおり、資金決済法という法律の改正(29年4月)に伴って、明文化されるに至っています。
資金決済に関する法律の第二条の5第一項において、「仮想通貨」とは、次に掲げるものと定義されています。
一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
つまり要件は、
- 代価の弁済のために不特定の者を相手に利用でき かつ
- 不特定の者を相手型として購入及び売却ができ かつ
- 電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
という3つを満たすものということであります。
わかりやすくまとめると、
- 決済手段として不特定多数相手に利用でき
- 公開市場等で購入・売却でき
- 電子情報として移転できるもの
となるわけです。
以下ではこのあたりをさらに堀り下げて見ていこうと思います。
決済手段として不特定多数に利用できる
この要件があることで、前払式支払手段(プリペイドカード等)と区別されます。
前払式支払手段等の場合、利用できる店舗や相手が決まっているものの、仮想通貨の場合、相手方が支払手段と認めれば、誰にでも利用することが可能です。
市場等で購入及び売却が可能
これも仮想通貨独特の要件であります。市場で随時法定通貨からの両替が可能であり、逆もまた然りであります。
この要件があることで、電子マネー等の、市場で購入・売却が不可能なものとは差別化されています。
電子情報として移転可能
これは前払式支払手段や電子マネーも満たす要件でありますが、法定通貨との差別化がされています。
法定通貨はあくまで現場貨幣であり、電子情報化されているわけではありません。
以上がビットコイン等の「仮想通貨」の法的位置付けであります。
次に、取引所の法的位置付けを見ていきましょう。
仮想通貨取引所の法的位置付け
4月に施行開始された改正資金決済法により、仮想通貨取引所には、金融庁及び金融庁から事務委任を受けている財務局への登録が義務付けられました。
登録制度は、銀行業務などに必要な免許制にまでは達しないまでも、届けるだけで業務を行えるような届出制度よりは厳しい要件が設けられます。
資金決済法に基づく内閣府令では、登録の資本要件として、以下二つを設けています。
- 資本金の額が1千万円以上であること
- 純資産額が負の値でないこと
特段厳しい要件ではありませんが、他にも顧客資産の分別管理等様々な義務が課せられています。
現状ある取引所はどうなるの
現状ある取引所は、みなし仮想通貨事業者として、6ヶ月の猶予のもと、仮想通貨事業を営むことを認められています。
改正資金決済法が29年4月から施行されたので、9月末までは全ての取引所が存続し、その後は登録を受けた取引所のみが存続することになります。
仮想通貨の法的問題点
その他仮想通貨の法的な問題点として、半ば主観的ではありますが、複数個取り上げてみようと思います。
金融商品取引法の適用がない
仮想通貨の法的な問題点の一つ目として、金融商品取引法の適用が無いという点があります。
これの何が問題なのかというと、
- 仮想通貨の信託を受け運用する
- 運用の助言行為を行う
といったことが誰にでもできてしまうという点です。
そのため、
- 運用のプロを偽って仮想通貨を集め、全て自分の懐に入れてしまう
- 顧客の事を何も考えず自分の利益のために違法・不当な助言行為を行う
といった事が簡単にできてしまい、電子情報として記録されるという仮想通貨の仕様上、こうした行為を行う人物の特定をしづらい状況にあります。
そのため最近の詐欺事件は、仮想通貨が金商法に該当しないという点を利用している事が非常に多いです。
金融庁の判断によって取引できなくなる通貨が生まれる蓋然性が高い
これは、改正資金決済法において記載されている法文を私なりに解釈した結果です。
というのも、以下の通り、資金決済法において、仮想通貨事業者は、登録を受ける際に、取り扱う仮想通貨の銘柄を申請書に記載して提出しなければならないと書いてあるのです。
(登録の申請)
第六十三条の三 前条の登録を受けようとする者は、内閣府令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した登録申請書を内閣総理大臣に提出しなければならない。
一 商号及び住所
二 資本金の額(中略)
七 取り扱う仮想通貨の名称
八 仮想通貨交換業の内容及び方法
(以下略)
役人が書類を審査する際には、基本的に内部の訓令や通達を参考にします。そして、訓令や通達に照らして、条件を満たさない場合には登録を拒否します。
つまり、役人の判断によって、取引所が扱える通貨に制限が生まれる可能性が高いという事。わざわざ登録にあたって、取り扱う仮想通貨の名称を記載しろと書いてあるということは、そういう可能性が高いということになります。
訓令や通達、事務連絡等で、「〇〇の通貨は登録拒否要件に該当する」という基準ができれば、日本での取り扱いは不可になります。
まとめ
上記までに述べてきた通り、仮想通貨は法的にかなり微妙な位置づけにあり、今後の国の対応等で、どう転んでもおかしくない可能性があります。
金融庁・国税・国会の対応等には目を通しておいたほうが良いかもしれません。